投稿者:
md
投稿日:
2019/11/4
投稿番号:1
「アカエル…」
そう声を掛けられた長身の男はゆっくりと振り返って、自分を呼んだ声の主のほうに顔を向けた。
そこには中世の時代からそのまま抜け出して来たかような髪型をした、1人の小柄な男性が立っていた。
「む…キーエルか」
アカエル、キーエルと共に呼び合う2人にはいずれも、口元に特徴的な髭が生えていた。
また、名の通りアカエルは赤色を基調とした、キーエルは黄色を基調とした衣服をそれぞれ身に纏っていた。
「お前のほうからオレに声をかけて来るとは珍しいな、一体どうしたというのだ」
少し苦笑いを含みつつ、アカエルと呼ばれた長身の男性は黄色い衣服を纏ったキーエルにカツカツと歩み寄った。ブロンズ色の髪の毛を頭頂で縛っているので、その容姿で余計に背が高く見えた。
「…あ、謝りたいと、思って…」
キーエルは自分に近寄って来るアカエルの、無意識に放たれている圧に怯えるような素振りを見せながら、そう答えた。
「謝る? 何をだ、お前は何かオレにとって都合の悪いことでもしたというのか? アオエルが無断でオレが楽しみに取っておいた昼食を食べたように、お前も最近それと同じようなことをしたというのか?」
冗談交じりでアカエルが笑いながらそう言うと、ただでさえ背の低いキーエルがもっと小さくなったように見えた。
「ち…違うよ…ボクは、そ、そんなことしないよ…」
「ああわかっている」
アカエルはビクビクしているキーエルの前まで来ると、彼と目線が合うよう、片膝を地面につけるようにして屈み込んだ。
「あれから落ち着いたか? キーエル」
そう言われたキーエルは、ずっと伏し目気味だった両目をうっすらと開けて、穏やかな表情をしているアカエルの顔を真っ直ぐ見据えた。
それから耐え切れなくなったかのように、両目から涙をポロポロと流し始めた。涙はキーエルの頬を伝って地面に次々と落ちていった。
「ボク…ボク…またやっちゃったんだ…自分でもわけがわからなくなっちゃって…とにかくみんなを守らなきゃって…思って…うう……」
アカエルは嗚咽を交えなら話すキーエルの右肩に手を置き、なだめるように体を揺さぶった。
「ああわかっているぞ、それはオレだけじゃなく、アオエルも、シロエルも、グランエルも、この国に住む住民全員が周知していることだ、だから自身に怯えることはない」
「でも、でも……」
キーエルはそう言うと、ぶるぶると震えながら蹲ってしまった。アカエルは丸まったキーエルの背中を優しくさすった。
「お前は皆を守るために戦ったのだ、それはお前自身に託された役割でもある。お前はこの度も見事にその務めを立派に果たしたのだ。同じ役目を請け負っている、オレとアオエルと共に、な」
アカエルがそう言っている間でも、キーエルの目からは延々と涙が流れ続けていた。
「でもボク…怖くて…恐ろしいんだ…自分で自分のことがコントロールできないだなんて…情けないし…何をしでかすかわからないし…怖い…怖いよ……怖いよアカエル…」
2人の体型の相違から、その光景はまるで父が子を慰めているように見えた。
アカエルは、それまで背中をさすっていた手を止め、両手でしっかりとキーエルの両方を掴んで、涙を流し続けている彼の顔を自分の顔に向けさせた。
「キーエル、もっと己に誇りを持て! お前はこの国を守り、繁栄させていく能力を司ったエルエル人なのだぞ! お前の代わりは誰もいない! オレとアオエルの2人だけで国の治安を保っていくことは不可能なのだ! お前という存在によって、この国がどれだけ守られているか、自分でよく考えてみろ、キーエル…」
キーエルは真剣な眼差しで自分にそのように訴えかけてくるアカエルを、涙が少しかわいた目でじっと見つめていた。アカエルはキーエルの両肩から手を離し、スッと立ち上がった。2人の身長差はそれこそ親と子のように見えた。
「キーエル、オレもアオエルも、お前と共に働けていることを嬉しく思っているんだぞ……オレたちは決してお前のあの姿に臆したりなどしていない。アオエルはむしろ面白がっている程だ……いやそれもどうかと思うがな……またお前が制御できなくなったときは、オレがこの手で止めてみせよう…だからどうか安心してくれ、キーエル様」
そう言われて、少し柔らかい表情になったキーエルを見ながらアカエルはニヤッと笑った。するとアカエルの羽織っているブーケのようなものがブワッと広がり、そのまま風に乗って羽のように羽ばたき、上空に舞い上がった。
「アオエルが無事敵を追い払った祝いに酒を出すと言っていたぞ、お前も当然来るだろう、キーエル」
少し呆然としていたキーエルは、ハッとなって、自身が身に纏っているコートのような羽織りを羽ばたかせ、上空に浮くアカエルの側まで舞い上がった。それから少し間を置いて
「ありがとう……アカエル」
と遠慮がちに、それでも嬉しそうに囁いた。
アカエルは先程より口角を上げると、酒を出して待っているというアオエルの元へ、キーエルと共に旋回しながら羽ばたいていった。
投稿者:
md
投稿日:
2019/11/4
投稿番号:5
良いおっさんの日に間に合うよう描いてたけど間に合わなかったニットおじさん……
クリスタで清書する用に上げ
デフォルメすると一気に描きやすくなる…でもかっこいい高頭身な絵も描きたくて…欲張りですかね